晩飯の友として何気なく見たアニメで、
あまりにもおもしろすぎるものを見つけた。
「事情を知らない転校生がグイグイ来る」
という作品だ。
ストーリーとしては、陰気な小学生女子がバイキン扱いされて
悲惨な生活を送っていたところに、とてつもなくアホな男子が
転校してきて、イジメの空気を破壊してくれるという話である。
(お父さん視点が添加されており、たぶんおっさん向けw)
イジメを題材にしているので、Primeのレビューでは
「いじめっ子の言動がリアルで、見ていて気分が悪い」
「いじめという深刻な問題を娯楽アニメのネタにするな」
などの批判的な声も少なくなかった。
しかし現実主義の私としては
「いじわる大国ニッポンではいじめは日常的不幸であり、
イジメをしたがるようなカスはそこらじゅうにいる」
という厳然たる事実を出発点にするのは悪いことではなく、
むしろそれに対する対抗策として一つの可能性を示すのは
素晴らしいことであると思った。
もしこの作品に難点があるとしたら、あまりにおもしろくて何度も
繰り返し観てしまうという点であり、その点では「高木さん」より劣る。
創作は、ほどほどにおもしろいものがよいのである。
人間の歴史においては、西洋の一部の支配者が
「愚民には麦と演劇さえ与えておけば、あとはすべて奪っても大丈夫」
などと発言していた例もあり、
仮想空間で過度におもしろいものを摂取すると現実問題への対処意欲が
低下しがちなので、その点で演劇はアヘンとよく似た危険性を持つと
考える人間は少なくない。
(日本でも、武士が平和ボケして腐りきっていた江戸時代中期には、
武士が遊民化してしまっている原因の何割かは演劇にあるとして、
武士の観劇が禁止されたこともあった)
そういう意味ではこのアニメはあまりよろしくないのだが、
逆に言うと、それほどまでにおもしろいとも言える。
(まわりくどくホメる私)
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ところで話は変わるが、このアニメの原作の人は、
なんか「逆転の発想」みたいなのがあると思った。
たとえば本作でイジメを受けている女子は
「目がぎょろっとしていて、黒目が小さい(白目部分が多い)」
という外観的特徴に起因していじめられているのだが、
このような外観は少女漫画ではむしろプラスに描かれる特徴である。
(少女漫画では、主人公は普段は星だらけのキラキラした瞳をしているが、
焦ったり照れたりびっくりしたときには黒目が点になり、
そして読者が主人公に好感を抱くのはそのような点目の姿だったりする。
この作者はそれを逆手に取り、主人公の好感度を上げているわけである)
また、転校生の少年は規格外れのアホの子として描かれているが、
実際に少年がやっていることは相手の論理の矛盾を突くという、
いわゆる「論破」のスタイルである。
ただし、自分はひたすら「個人の感想」を言いまくることに徹し、
自説の論理性は自ら完全放棄することによって
相手からの「矛盾指摘」をシャットアウトしているので、
この点はソクラテスの手法(=自分の意見を言わない)とは逆だ。
この方法だと、相手から「そんなのはお前だけだ」「お前は異常だ」と
言われることは避けられないが、
それさえ甘受してしまえばある種の無敵状態となり、
たぶんひろゆきでも勝てないであろうと予想される。
(そういえば、この方法でひろゆきに完勝した芸人がいたような)
ということで、
よくよく考えると論理戦を考えるうえで深い話ともいえるので、
T5的に面白いかもしれないから、T5の人におススメ
という話でした。
追記:
このアニメは、たぶん12話くらいがちょうどよいと思う。
漫画のほうで6年生編を読んだが、もうおもしろくなくなっていた。
まあそりゃそうだ、少女がだんだん陰気じゃなくなってくると、それにつれて
少年のアホさの価値が目減りしていくのは避けられないからな。
無理に話を引っ張ると、今度は作者(3w2)の短所が目立ち始めることになる。
3w2の書き物手法には独自性があるし(c4)、内容もわかりやすくておもしろいのだが、
しかし3w2の妄想はもともと自己願望的で矛盾も多いので、長びくと粗が出てしまう。
せっかくいい作品なので、アニメのほうはきれいに終わらせてやってほしいと願う。
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最後にイジメについてまじめな話をすると、
私はいじめが非常に残酷なものであるのは同意するが、
残酷だ残酷だと言っても何の解決にもならず、
肝心なのは具体的にいじめっ子にどう対抗するかだと思う。
それを自ら考えるのではなく、「学校が悪い」「教師が悪い」
とか言って、すぐに問題を社会に丸投げするのはよろしくない。
いじめをしたくてしかたのない人は一定割合で存在しており、
学校のみならず職場やママ友にも必ずといってよいほど
「意地悪を使って優位に立とうとする奴」はいるのだから、
それらを社会システムによってすべて防止するのは不可能であり、
イジメは人間にとって避けて通れない試練と考えておくべきと思う。
ということで、どうにか自己防衛をするしかないという方向で考えると、
いじめを撃退するにはいろいろな方法があり、たとえば
学校に行くのをやめるとか転校するとかも対策のひとつであるが、
そもそも悪いのはいじめっこのほうなのであるから、
できれば逃げるよりも撃破するほうが望ましいと思う人が多いだろう。
しかしイジメ好きはドラクエの敵のごとく無限に湧いてきてしまうため、
それらをいちいち倒して懲らしめようと考えるのはナンセンスであり、
それよりも「いかにして敵の意地悪攻撃を無力化するか」を考えるほうが
得策であると思う。
総じて「言葉」を使うタイプのいじめ攻撃は、
たいていは人数差を用いて悪意のこもった雰囲気攻撃をじわじわと
エスカレートさせていくという手法であるから、
その対策として空気を読まない奴を味方にして敵の話の腰を折り、
雰囲気の醸成を妨害するというのは筋の良い手段だと私は思う。
(私も小学生のとき、転校によって奴隷的身分にされた際に、
本作の日野君(=転校生の親友で主人公の味方)のようなKYな友人を
得ることで救われたという経験がある)
ところで余談だが、アニメ評価サイトでこの作品の評価を見ていたら、
なんと評価800件中の半数以上が批判という、異常なサイトも存在した。
批判のすべてを否定する気はないが、さすがにここまで来ると、
むしろこのサイトこそがいじめサイトのように見える・・・。
ということで、他人の足を引っ張るのが大好きなスネ夫大国ニッポンでは、
残念ながら今後もイジメはますます増えるのかなと思った。