いつの時代も、詐欺師は「積立」と「保険」を混ぜたがる。
積立というのは、わかりやすく修学旅行費の例で言うと、
「いざ修学旅行に行く段階になって親が ”お金ない” とか
言い出したら子供が気の毒だから、
バカ親たちに強制的に積み立てをさせましょう。
余計なお世話なのは承知してるけど、アホが多すぎるからしょうがない」
というような制度である。
このように、積立は制度としては明らかにおせっかいなのであるが、
病気等で修学旅行に行けなかった場合は当然のごとく返金されるので、
お金的に損をするわけではない。(短期間の利息がどうこうという話は無視する)
つまり積立とは、
①【金額面】については、期待値は±0なので問題ない。
②【自由度】については、強制である点が不愉快だが子供にはメリット。
という話である。
一方で保険というのは、
「運悪く悲惨な目に遭った時に備えて、
保険に加入したい人が皆で少しずつお金を出し、
悪運を引いた時に保険金がもらえる仕組みにしましょう。
もし最後まで悪運を引かなかった場合は損をすることになるが、逆の場合もある。
期待値的に言えば経費分だけ全員少しマイナスだけど、
それで心配事が減るのなら、まあいいじゃん。」
という制度である。
つまり保険とは、
①【金額面】について言えば、経費がかかるぶん期待値はマイナスだが、
個々が備えを省略できるというメリットがある。
②【自由度】については。加入は自由だから何も問題ない。
という話である。
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さて、当たり前のことばかり書いてきたところで、
我が国の「年金」というものを考えよう。
(注:このグラフでは、民間を通じて強制負担させられているお金、
すなわち諸々の強要免許代とか強要設備代とか強要見張り賃金とかは含まれていない)
本来、年金というのは積立ではなく保険であったはずである。
露骨な言い方をすれば、
「もし運悪く長生きをしてしまった場合に備えるもの」
が年金となるはずであった。
多くの人は、図らずも長生きをしたことで子や孫の負担になるのは
忍びないと思うだろうし、かといってすべて自分個人で備えるという
ことになると「最悪100歳までの生活資金」を積み立てねばならず、
実現が難しすぎて人生がハードモードになってしまう。
従って、ひとまずある年齢までは自分で備えることとして、
それ以上の年齢まで長生きしてしまった場合は
ある種の「不運」ということで保険に頼ろうかという考えが出てくる。
こうして考えると、平均寿命まで生きることは
どう考えても「低確率な不運」とは言えず、
一般に不運と言えるのは、少なく見積もっても
「平均寿命+5年以上」を生きることになった場合だけであろう。
従って、本来の主旨から言えば年金は85歳までは「受取額0円」であるのが
当然なのだが、ただまあ70歳を過ぎると身体のあちこちが老朽化して
思い通りに働けなくなるのも周知の事実であるから、
そのへんの性能や稼働率の低下面も考慮したうえで、
たとえば
【71~79歳は毎月40%、80~85歳は毎月70%、86歳以上は毎月100%を
受け取れる制度にします】・・・(*1)
というような話だったとしても、
まあ合理的の範疇であると言えるだろう。
しかし、これが「65歳以上は全員満額もらえますよ!」という話だと一変する。
そういう大半の人が受け取り条件に達する仕組みは、保険ではなく積立である。
正確には積立型保険に当たるのだろうが、積立の部分がものすごく大きい。
何しろ、65~80歳までの15年ぶんを、20~65歳までの45年で積み立てるのだから、
これを実現しようとしたら、皆が収入の4分の1を積み立てに回す必要がある
ということは簡単な算数でわかることである。
これって、もし民間の保険であったとしたら、入る奴いるかな?
【〇〇保険株式会社から、新商品のお知らせです。
お客様の収入の4分の1を強制的に取り立てて、老後に備える新・老後保険!!
途中で気が変わることを一切許さないので、意志の弱い人も安心ですよ?
しかも、平均寿命を超えれば元金以上に戻ってくる(かもしれない)という
ラッキーチャンスもついています。ね、おトクでしょう?
なお途中解約の場合は、それまで払ったお金はすべて没収となります。
あと、途中で死んだ場合も全額没収です。あしからず。】・・・(*2)
いや、これに入るやつって普通にキチガイだと思うんだが、
私の感覚がおかしいだけなのかな?
逆に、先に述べた(*1)のような制度なら、
受け取り満額を一人月額10万として、保険料はだいたい以下のようになる。
・積立ぶん:(0.4*9+0.7*6)=7.8年ぶん、
これを70歳までの50年で払うと月額10万の15.6%=月15,600円
・保険ぶん:非営利運営で経費3%として月3,000円
・合計:月18,600円
まあこんなもんやろ。
積立型老後保険をしてもいいかもしれん限度額は、このへんではないかな。
それ以上は、余計なお世話というものだ。
それなのに、なんで
「全国民に、全収入の18%を完全強制で積み立てさせましょう!!」
という話になるんだろう?
18%って、月収28万でも5万超えだぞ?
「会社負担」とかいう詭弁ゴマカシに騙されない方向で考えれば、
ぶっちゃけ額面25万(=本当の給料は29万円)以上の人は、
全員が5万以上を積立強制させられているのだ。
(※ついでに言うと、上記の29万には消費税を(実質的に)抜かれている分は入っていないため、
額面25万の人の本当の給料相当額は31万を超えている。でもなぜか手取りは21万になる。
お利口な税制では「人件費だけ仕入控除させないことにすれば、実質的に人件費に消費税が
かかっているのと同じにできるやんけ♥」という仕組みになっており、
それゆえ会計界では「消費税=人件費税」とも言われている。
要するに、すべての人は給料をもらう時点で消費税までキッチリ抜かれているのである)
どんなに貧乏でも18%は強制しますって言うんだから、
ここまでいくと、さすがに「余計なお世話」としか思えない。
仕事や子育てで「今が一番カネがいる」というときでも、
そんなことは知ったこっちゃねえ。年金は絶対強制。
もし世の中に
「若いうちに多くを使い、老いたら少なく使う」
という生き方をしたい人がいたとしても、そんなのは余裕で却下される。
また、長期的視点で
「70歳を過ぎてもボチボチ仕事できるような環境やスキルを準備しておき、
年金で足りないぶんを上乗せできるようにしておこう」
みたいに考えることも、ワガママで勝手な行動として即座に却下される。
そういうワガママなことを言うと、年金は減額されてしまうのだ。
年金というのは、
将来を考えられない低能キリギリスである国民を、
えらいお上の人が監督して、強制積立をしてくれるという
たいへんありがたい制度であるから、
愚かな国民は絶対服従しなければならないのである。
世の中には、
「集めた積立金をパクっている悪代官が、存在するのではないか?」
と疑う人もいるかもしれないが、
そんなことは疑っても無駄である。
お代官様としては
「ほっほっほ、愚かよのう。
パクっているとは人聞きが悪い、それは”経費”と呼ぶのじゃよ。
ほれ、積み立て方式だと金額が大きくなるぶん、特に経費がかかるじゃろ?
それが世の中というものじゃよ、君。」
としか言わないので、
疑う時間が無駄になってしまうのである。